
嘘ではなく、昔から女性アイドルやタレントにそんなに心惹かれることはなく、映画やテレビを観てきた私ですが、この映画を観たときはひさびさに「なんて可愛いのか」と素直に思ってしまいました。それが2004年チャン・ツィイーの出た「ラバーズ/LOVERS(原題:十面埋伏)」です。この映画はご存知のようにあの金城武やアンディ・ラウという私の結構ごひいきの役者も出ているのですが、この映画においては彼らは脇役に過ぎず、あくまで主役はチャン・ツィイーひとりに集約される、そんな映画だと思いました。
この映画の監督チャン・イーモウは「紅いコーリャン」で監督デビューして以来、かずかずのヒット作を送り出し、最近では高倉健主演の「単騎、千里を走る。」なんかも撮っていますが、私は実はそれほど好きな監督ではありません。というのも同じチャン・ツィイーが主演した「初恋のきた道」をDVDで観たとき、なんだアイドル映画か?と感じて、映画自体の面白さをそれほど感じなかったからです。「ヒーロー/HERO」は娯楽活劇として少し楽しめましたが、やはり心に迫るものはありませんでした。
ところが、「ラバーズ/LOVERS」は同じチャン・ツィイーでありながら、彼女に迫る視線(カメラ)の集中の度合いにおいて過去の作品とは次元が違っていました。私はこの映画をチャン・ツィイーのアイドル・プロモーションビデオとして観ましたが、これがこの監督の、彼ならではの能力なのだな、と勝手に感心した次第です。監督チャン・イーモウは、主役をアイドルとして撮るのにその才能を発揮する人なのだと思います。観てはいませんが、きっと高倉健も「単騎、千里を走る。」においては、ひとりのアイドルとしてスクリーンに定着しているのではないかと想像してしまいます。
花王「Asience(アジエンス)」のCMなどでも活躍していた彼女ですが、私にとってのチャン・ツィイーは「ラバーズ/LOVERS」の中でだけ輝きを解き放った存在です。ありきたりな感想ですが、盲目の女を演じる彼女が遊郭で舞う姿はまさにアイドル(偶像)の顕現だと私には感じられました。少年・少女マンガ的な美しい女性像の典型という意味で、結晶化された姿がそこにはあると思います。

