2016年05月14日

「レヴェナント」〜良くも悪くもレオ様の過剰な存在感。

蘇えりし猫しんのすけ


ちょっと前に、ずいぶん久しぶりに映画館に映画を観に行ったことを書いたが、また先日観に行くことができた。こんど観たのは「レヴェナント〜蘇えりし者」。レオナルド・ディカプリオが悲願のオスカーをとったということで、この春に話題を振りまいた映画である。世間的にこの映画がどんな評価をされているか知らないが、いやーー、つっこみどころ満載であった。あとで調べたら、この映画はアカデミー作品賞はとっていないと知って安堵した(?)。さすがにこれじゃあねぇ・・・。というわけで今回は、「レヴェナント」という映画の美点を誉めるのではなく、好意を込めて作品に“ちゃちゃ”をいれてみたいと思う。

※この映画、あまりネタバレ的な影響はないと思われるが、気になる人はこの先注意して読まれたし。

この映画のあらすじなんかはネットを見ればいっぱい落ちているので書かないが、基本的には復讐譚である。主人公グラス(ディカプリオ)が息子を殺され、その復讐を果たすべく、瀕死の状況から超人的なサバイバルをくりひろげていく。そのサバイバルシーンがあまりに凄まじくて、肝心の復讐劇が霞んでしまうほどであった。「レヴェナント」とは“帰ってきたもの”とか“亡霊・幽霊”といった意味らしいが、端的にこの映画の真髄を示しているタイトルである。それがいいかどうかは別として・・・。

「レヴェナント」は、たぶんシリアスな映画の範疇に入ると思う。ディカプリオをはじめ俳優陣もみなしっかりしていて、演技もまじめに重厚なリアリティがあった。しかし、しかし、主人公のサバイバルシーンがあまりに演出過剰で、とてもシリアスには観ることができない。不死身の主人公、ありえない運をもった展開もあってよい。そんなプロットが気にならないような、リアリティにあふれたすばらしい映画もたくさんあると思う。だが、「レヴェナント」はそれがちょっと鼻についてしまい、たとえばプロレスの流血サービスを見ているような、そんな錯覚さえ感じられた。
グリズリーとの格闘シーンにはじまり、生魚を貪ったり、骨だけが残った獣の死骸の髄をしゃぶったり、死んだ馬の内臓を抜いてそのなかに裸で入って暖をとったりと、ここまでサバイバルを見せる必要があったのだろうか。「蘇えりし者」というタイトルに忠実といってしまえばその通りなのだが、『蘇えり』のシーンをこんなに重ねなくても・・・まぁ、この過剰さがこの映画の魅力なのかもしれないけれど。

主人公のディカプリオについて。 タランティーノの「ジャンゴ〜繋がれざる者」(タイトルの感じが似ているね)では、その悪役っぷりがとてもよかった。タランティーノの演出とも相まって、そのときは彼のちょっと過剰な演技のことを何とも思わなかった。しかし「レヴェナント」を観て、ディカプリオというのは演技過剰が彼の本質なのだなとあらためてよく分かった。今回主人公の敵(かたき)役としてトム・ハーディーが好演していたが、ディカプリオに隠れてちょっと薄味だったかも。相手がオーバーアクションのディカプリオでなければ、もっといい味をだせていたかもしれない。悪役が輝くことが、この手の映画の良し悪しを決めるとボクは確信しているが、その意味でトム・ハーディー(の演技)は、この映画に向いていなかったのでは、と個人的に思ってしまったが、感じ方は人それぞれであることは言うまでもない。

と、いろいろちゃちゃを入れてみたが、よかった点ももちろんある。なんといってもこの映画、撮影がとてもよかった。最近はCGで補正して、自然描写もきれいに過ぎたりすることがたまにあるが、「レヴェナント」の自然は(補正されていたとしても)まさにナチュラルで美しいと感じた。物語の背景はアメリカ西部開拓時代(1820年代らしい)なのだが、いわゆる西部劇によくある乾いた荒野のイメージではなく、凍てつく冬の西部を描いていて美しい。演出・演技がちょっと脂っこい感じなので、よけいにこの自然描写はさっぱり感が心地よく、この映画の救いとなっているのではないだろうか。(ちなみに撮影は南米アルゼンチンなどで撮ったらしいが)

「レヴェナント」を観ていて、この監督は何をいちばんに伝えたかったのかを考えた。 よく分からないけど、この風景だったのではないかと思った。この『風景』とは、(西欧人=白人にとっての)アメリカという歴史の浅い国のもつ『原風景』である。そのアメリカの原風景には、雄大だが厳しい自然風景だけでなく、その世界にあらたに棲みつこうとする“原”米国人の姿が刻まれていなくてはならない。そしてその『原米国人』は、ディカプリオのように過剰なエネルギーを表現する役者が演じなくては表現されなかった、のかもしれない。

posted by なすぱぱ at 07:19 | Comment(0) | TrackBack(0) | テレビ・映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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